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   10周年記念特別号      無断転載および印刷はご遠慮ください
                                 
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NPO法人青森県男女共同参画研究所10周年記念事業 開催
“拡がるBook Talk”  加納実紀代と上野千鶴子と佐藤恵子が語り合う
「日本の女性史・あゆみとくらし」

 NPO法人青森県男女共同参画研究所10周年の記念事業は、2011年7月16日(土)に、弘前総合学習センターにおいて、北は札幌から南は静岡、名古屋といった遠方の方々を含めた140名あまりの皆様のご参加をいただいて盛大に開催しました。
 
 今回の10周年事業はNPO法人ウイメンズアクションネットワーク(所在地:京都、理事長:上野千鶴子 東京大学名誉教授)との協働プロジェクトであったことから、講師に敬和学園大学前特任教授の加納実紀代さんと上野千鶴子さんをお迎えし、地元青森からは県立保健大学教授の佐藤恵子さん(当研究所監事)という豪華な顔ぶれで、充実した内容で開催できました。
 NPO法人ウイメンズアクションネットワークでは、「世代を超え、性別を超え、フェミニズムを次世代に手渡すための書籍『新編 日本のフェミニズム』(岩波書店)全12巻」の完結を記念し、2011年6月から「拡がるブックトーク」を全国12ヶ所で開催していました。当研究所では10周年記念事業として共催に名乗りをあげ、「日本の女性史・あゆみとくらし」をテーマに2部構成で開催しました。
 第1部では、『新編 日本のフェミニズム』10巻「女性史・ジェンダー史」の編者である加納実紀代さんが「近代とジェンダー」をテーマに基調講演しました。
 「わたしはだれ?どこからきたの?この問いのなかから女性史は生れた。しあわせいっぱい、現状に満ち足りていれば、ふつう人は出自を問うたりはしない。
 女という存在への不安、不当な社会への怒り。女であることの痛覚と言ってもよい。なぜ女はこうなのか。どうすれば変えることができるのか。<現在>の痛覚に根ざして<過去>を問う女性史には、<未来>への願いがこめられている。」という加納さんの思いが伝わる講演内容でした。
 第2部では上野千鶴子さんをコーディネーターに加納実紀代さん、佐藤恵子さんの3人で「日本の女性史」や1999年3月青森県発行の「青森県女性史」について熱く語り合いました。
 
なお、翌17日(日)には、青森県男女共同参画センターが青森市の「アピオあおもり」において、「今日はとことん女性学!〜次のわたしに出会う交差点〜」をテーマにこの協働プロジェクトを開催しました。なんと!青森県は「拡がるブックトーク」を2日間セット開催するという快挙を成し遂げました。

    <プロフィール>
加納実紀代さん
1940年ソウル生まれ。敬和学園大学前特任教授。専門は日本近代女性史。
1985年山川菊栄賞受賞。
上野千鶴子さん
1948年生まれ。東京大学名誉教授。NPO法人ウイメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。日本学術会議会員。専門は女性学、ジェンダー研究。
この分野のパイオニアで指導的な理論家のひとり。1994年サントリー学芸賞受賞。
2007年「おひとりさまの老後」は75万部のベストセラー。2011年朝日賞受賞。
佐藤恵子さん
1949年名古屋に生まれ。青森県立保健大学教授。専門は女性問題、女性福祉、家族問題。
1999年3月青森県発行「青森県女性史あゆみとくらし」編集委員。
長年にわたり青森県男女共同参画審議会委員(委員長)などを務めるほか各種NPO活動を展開。2011年度青森県いきいき男女共同参画社会づくり表彰功労賞受賞。
 

7月16日(土)「森のイスキア」にて
佐藤初女さんと話し込む上野千鶴子さん、加納実紀代さん




ブックトーク「日本の女性史・あゆみとくらし」概要 
監事 佐藤 恵子 
第1部 基調講演
 フェミニズムにとっての近代およびジェンダーは、共に打破すべきものである。フェミニズムとしての女性史は、これまでの男性権力者による歴史(=男性史)の中で姿が見えなかった女性の歴史を、多様な史料を使って発掘することであり、とくに聞き書き(オーラル・ヒストリー)は女性史研究の重要な方法である。日本では1970年代以降、聞き書きによって身近な地域の歴史の発掘に取り組む地域女性史が発展している。
 1990年代以降歴史学へのジェンダー概念の導入が進み、日本では明治維新からジェンダー化が始まったことがわかっている。近代国家の形成を目指して、男性と女性を分断し、男性には忠君愛国、女性には良妻賢母を割り当てた。当時の天皇と皇后の姿は、男性性と女性性の象徴として作られたものである。
 ジェンダーを打破するためには、日常生活・生きる場からジェンダーを崩していくこと、女性の意思(経験)や発言(行動)を通して家族や地域の暮らしを変えていくことが重要であり、地域女性史の実践はそのための強力な拠り所となると考えている。
第2部 パネルディスカッション
 始めにコーディネーターの上野千鶴子さんが、基調講演をふまえてパネルディスカッションの論点整理を行い、それを受けて佐藤、加納さんがそれぞれの立場から発言した。
 【上野千鶴子】
 フェミニズムとしての女性史を考える際の論点として、「女の歴史をつくる」→「女が歴史をつくる」→「フェミニズムの歴史をつくる」があげられる。これらの論点をふまえて、このパネルディスカッションでは、「女性史は何を変えたのか?@歴史の見方を変えたのか A歴史学という学問を変えたのか」について話し合いたい。
 女性史の実践は、従来の歴史(男性史)の中で等閑視されていた女性の歴史を付け足した。しかし、これまでの男性中心の見方(歴史観)をひっくり返して、女性の視点で歴史を作り直したといえるのか?また、男性研究者による男性視点の学問の老舗である『歴史学』を変えることはできたのだろうか?
 女性史が切り開いたオーラル・ヒストリーのインパクトは、歴史学の民衆化だった。立場によって異なる歴史がつくられ、歴史は一つではないこと、誰でも歴史家になれることを示し、歴史の複線化・相対化をもたらした。
【佐藤恵子】
 『青森県女性史−あゆみとくらし』(1999年3月刊行)は、青森県の男女共同参画政策の一環として取り組まれた。T通史編(近世末〜現在)U生活誌 V現代編の3部構成。編纂にあたって、執筆者間の視点の共有、差別の捉え方、反体制的活動の取り上げ方など様々な難しさがあった。しかし、初めて青森県の女性たちの歴史を全体的に明らかにしたことの意義は大きかった。苛酷な環境の中で、力強く生き抜いてきた先人女性たちの働きを再認識するとともに、女性たちの状況改善のための貴重な資料となった。青森の女性たちの地位や役割、意識や行動の背景(土台・根底)には、農業・農村女性の影響が大きく、そのことをふまえた施策が必要であることが裏付けられた。
【加納実紀代】
 上野さんの問に対しての回答。女性史の実践は進んでいるが、いまだ歴史学という学問を変えるには至っていない。女性史は専門分野として確立しておらず、現在も女性史学科は存在しない。依然として女性史は民間学であり、研究者は独学である。
  オーラル・ヒストリー学会では、戦争被害を聞き取り、記録に残す作業に取り組んでいるが、それらを通して何を訴えるか、問題提起するかが重要である。遊郭の歴史を調べているが、その中で売春に対するまなざしには、被害者としてだけでなく女性自身の差別視、分断があると感じる。従軍慰安婦問題についても同様である。
 私は、広島原爆被害者の立場から原発に反対している。青森には核燃料サイクルを始めたくさんの原発が立地されている。原発は、近代の価値が生み出したコントロール不能な技術である。今こそ若い世代が歴史を学び、脱原発に向けて声をあげることを期待したい。
【会場との質疑応答】
 パネリストの発言に対して会場からは、青森県女性史の執筆者の他、大学院で歴史を学んでいる女子学生、20代の男性などから多数の質問や意見が出され、フェミニズムとしての女性史に対する関心の高さが感じられた。

会員の感想
(1)国立女性教育会館から“拡がるBook Talk”へのつながり 
          理事 田中 弘子
 平成10年8月に開催された国立女性教育会館主催のワークショップで、出合ったのが、“拡がるBook Talk”をつないでくださった渋谷典子さんでした。 現在、渋谷典子さんは、名古屋市男女平等参画推進センター「つながれっとNAGOYA」の 指定管理者であるNPO法人参画プラネットの代表理事であり、“拡がるBook Talk”の共催であるNPO法人ウイメンズアクションネットワーク(略してWAN・理事長上野千鶴子)の副理事長でもあります。
 当研究所の10周年記念事業は、名古屋との女縁からはじまり、全国規模で多種多様な人たちとつながり、動き出しました。今更ながら、男女共同参画の拠点である国立女性教育会館は、社会的な価値のある存在であるといえます。私にとって、国立女性教育会館ヌエック様々です。
 当研究所の10周年記念事業を終えることができたのは、渋谷典子さんとヌエックでつがっていたからでした。本当に国立女性教育会館と渋谷典子さんには、心から感謝申し上げます。
※森のイスキア:佐藤初女さんが主催する癒しの施設

(2)ブックトーク・フォーラムに参加して
監事 佐藤 恵子
当NPOの10周年記念事業として行われた今回のフォーラムは、私にとっても記念すべきイベントとなりました。日本のフェミニズムの第一人者である上野千鶴子さんと日本女性史を代表する加納実紀代さんと同じ舞台に登壇して話し合うことになろうとは、当初全く予想していませんでした。そのため、著名なお二人に対する気後れと青森の代表として恥ずかしくない発言をしなければというプレッシャーで、開催日当日まで不安と緊張で一杯でした。実際に、加納さんの基調講演を拝聴して、女性史に対する理解が深まると共に女性史研究に取り組む加納さんの凜とした姿勢に胸を打たれました。
 パネルディスカッションでは上野さんの見事な采配によって、緊張が解け自分の思いや意見を率直に話すことができ、晴れ晴れとした気持ちで終えることができました。
 私にとってもNPOにとっても、これからの活動につながる大きな自信と勇気を与えられた有意義なフォーラムであったと思います。

(3)アピオ『今日はとことん女性学!』で感じたこと
 理事 須藤 千和子

「新編 日本のフェミニズム」全12巻の発行記念として全国12か所で開催されたブックトークの一環でしたので基調講演は第3巻『性役割』解説著者の井上輝子(和光大学教授)先生が研究者として女性学の変遷、本の構成等詳しく語られました。この日に先立ち青森県男女共同参画センターでは佐藤恵子先生を講師に第3巻『性役割』の内容理解のために3回の読み合わせを行い学ばせていただきましたが、それでも私にとっては難しさを禁じえませんでした。
 17日の井上、上野千鶴子、佐藤恵子各先生のシンポジウムでは同じ研究者なのになぜか上野先生に非日常を感じ、佐藤先生には日常を感じました。佐藤先生は立場は研究者ですが、常に私達と同じフィールドに立って「男性も女性も『自分を縛っているもの』から解放され、それぞれのカラーで生きていきましょう」というメッセージを先生自らの経験をもとに発信なさっているからだと思いました。上野先生のお考えをもっとお聞きしたかったです。


(4)10周年に思う
                     理事 山谷 文子
男女共同参画社会づくりをめざして様々な活動をしてきましたが、思えば、素敵な仲間に恵まれました。10周年を迎えることができたことに感謝しています。
 また、その記念すべき年に、すばらしいブックトークを開催できたことは感無量です。皆様に「ありがとうございます」と、お礼を申し上げます。
 

(5)「森のイスキア」での交流会
理事 山本 公子
ブックトークの夜の「森のイスキア」での交流会は、料理も美味しく、会話も楽しく、思い出いっぱいのひとときでした。あこがれの上野さんは、小柄で笑顔の素敵な方でした。直接お会いしたことで、ますますファンになってしまいました。加納さんは、静かに私の話を聞いてくださいました。お二人にお会いでき、ほんとうに良かったと思っています。機会がありましたら、ぜひまたお会いしたく思っています。

 佐藤恵子さん
 「青森県いきいき男女共同参画社会づくり表彰」功労賞を受賞!

本県の男女共同参画社会づくりの推進に多大なる功績が認められ、佐藤恵子さんが「青森県いきいき男女共同参画社会づくり表彰」功労賞を受賞しました。
 2011.11.5(土)にアピオあおもりで開催されたアピオ秋祭りにおいて、三村知事から表彰状と副賞の盾が佐藤恵子さんに贈られました。
 受賞者を代表して佐藤恵子さんからお礼の言葉が述べられ、会場からは暖かな、そして大きな拍手がおくられました。
 その夜、当研究所の前田みき理事長が発起人代表を務める「お祝いの会」が開催され、佐藤恵子先生の受賞を喜ぶ多くの皆さんが参集し祝福しました。 おめでとうございます!!


  宿泊研修・交流会開催

日時:2012年2月18日(土)〜 2月19日(日)
場所:三沢市古牧温泉青森屋

研修は当研究所の理事長である前田みきさんを講師として「社会教育・女性教育から学んだこと」をテーマに開催しました。
当研究所の会員のほか交流団体の三沢市の「まち・きらきらセミナー一期生『ウィメンズビジョン』」や八戸市の「はちのへ男女共同参画推進ネットワーク」の皆さんも参加してくださりにぎやかにそして内容の濃い研修会となりました。